小学生の目標はたったひとつです。
「勉強するって楽しいんだ」と本当に実感すること。それさえできたら学力なんてあとからいくらでもついてきます。これからの長い人生の中で、学ぶ楽しさを感覚として心の奥底に刻みつける時はこの時期を除いてありません。
例えば小学6年生の算数では「場合の数」を学びます。
先生「ここにエースが4枚あるけど、ひとつ賭けをしよう。よーくシャッフルしてからこんな風に4枚とも裏返す。もうどれがどのカードか分からなくなったね。ここから2枚のカードを選んで表にするよ。カード2枚が同じ色、つまり赤2枚か黒2枚の場合と、2枚が違った色、つまり赤黒の場合がるよね。」
生徒「うん。」
先生「何回かこれを繰り返してどちらがたくさん出るか賭けをする。同じ色の方、赤赤か黒黒が多く出ると思う人は右に座っておくれ。違う色の方、赤黒が多く出ると思う人は左だ。」
話し方で誘導しているせいもあるが、生徒は赤赤・黒黒と二通りの場合に比べて赤黒は一通りだと考え、右側の席に移る者が多い。しかし、実際に試行を始めると赤黒が圧倒的に勝ってしまう。「なんでー?」皆しきりに理由を知りたがる。子どもは謎解きが好きだ。自分の選んだ行為を支配している不思議な法則……小学生たちはこの謎を解くために「場合の数」の勉強を始める。
やがて酉の市でチョコバナナを買う時に「ジャンケンで勝ったら一本おまけ」の店と「サイコロを2個振ってぞろ目が出たら一本おまけ」の店のどちらがどれほど有利かを自分で計算できるようにもなる。確率の初歩を学んだのだ。
「楽しさ」は一通りではない。様々な料理を味わうように様々な課題の楽しみ方がある。しかし共通しているのは、どれも子どもにとって「おいしくなければならない」ということだ。